先日、ノーベル賞受賞者が発表されました。今年は日本人受賞者が2名、化学賞の北川進さんと生理・医学賞の坂口志文さんです。
北川進さんの受賞理由は「金属有機構造体の開発」でした。金属有機構造体とは金属原子がジャングルジムのように一定のすき間を空けた構造の多孔質です。多孔質の物質として身近なものでは炭が知られていて、このすき間に臭い成分の気体分子が入りこむことで消臭効果があります。金属有機構造体も同様に気体の吸着作用を持っており、さらに画期的なのは加工段階ですき間のサイズをコントロールできるので、狙った気体分子を吸着する多孔質を作ることができる点です。これを利用し、将来的には温室効果ガスや有害ガスの排出削減が期待できます。
坂口志文さんは「末梢性免疫寛容に関する発見」が評価され、受賞にいたりました。具体的には制御性T細胞を発見したことです。免疫寛容とは身体への負荷や適切な生命活動の維持のためにあえて免疫機能を制限するしくみのことで、制御性T細胞は体内の免疫細胞が生体にとって有益な物質や生体自身の細胞を異物として処理しないようにはたらいています。現在の高校生物の教科書でも載っており、マンガ「はたらく細胞」でもスーツ姿の女性キャラとして描かれて登場します。
科学は、それ自体は意思を持たない力です。アルフレッド・ノーベルがつくったダイナマイトは安全に建物を壊すことにも戦争で攻撃をすることにも使用できます。今回、ノーベル賞を受けるに至った英知を私たちは平和のために使っていかなければなりません。そして、それを後世につたえていくことも私たちの使命です。