最初の印象って大事ですよね。

 最近、文庫本で太宰治とか三島由紀夫とか、いわゆる名作文学作品系のものが表紙を見せて並んでいるのを見かけることがあります。で、この表紙が現代風のマンガ調だったりするのですが・・これ、多分おじさんだからなんでしょうけど、どうしても違和感が先に立ってしまいます。最初に読んだ時のイメージに縛られてしまうのが原因だと思います。もちろん、だからもっと重々しい“芸術的な”表紙を・・とか言い出すつもりもないですし、それで若者が手に取りやすくなるならその方がいいんじゃないかとはわかってるんですけども。

 それで思い出すのが『冒険者たち』です。

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 もしかしたらアニメの『ガンバの冒険』といったほうがわかる人も多いかもしれません。こちらの場合は、私はアニメを先に知ったので、小説版のまさにネズミそのものという挿絵に最初は戸惑いました。逆に小説から入った人は、アニメのかわいらしい、服を着た姿をどう感じたんでしょうか。

 人気があって、長く親しまれている作品であれば、こういう再販とか文庫化とか、場合によっては実写映画化、アニメ化など、さまざまな形で世に出てくるわけで、そうなると世代によって原体験がまちまちになっちゃったりとかいう問題も起きそうです。表紙や挿絵が変わるだけでも大分印象は変わるものですが、メディアを変えるとなれば当然内容に手を入れる必要もあるでしょうし、そうなればイメージどころかストーリーの思い出すら共有できないこともあるのかな?多分。

 どんな形にせよ、気に入った作品のバリエーションが増えるのを歓迎して、楽しむ姿勢でいたほうが幸せでいられる気はするのですが、どうしても「こんなの僕の好きなあの作品じゃない」みたいな感情も湧いてきてしまう部分もあります。むしろ別物になってしまったならそれはそれで楽しむくらいの大きな器が欲しいもんです。

 実際『冒険者たち』の記憶に戻れば、すぐに慣れてしまった気がします。『ガンバとカワウソの冒険』のときには、ヒロインのネズミの挿絵-もちろんネズミの絵です-がちゃんと美少女に見えてましたし。最初の違和感さえ乗り越えれば別になんてことないものも多いのかもしれません。

 ・・でも、『ゲド戦記』の絵はやっぱりあの版画調のやつが最高だと思うし、『人間失格』の表紙がマンガの『Death Note』を思い出しちゃうような感じの絵じゃよくなんじゃないかなあ、とか思ったり思わなかったり・・いや、こんなことを言うと器が小さいのがばれてしまうからよくないし・・。なかなか難しいもんです。どうするのが正解に近いんですかね。