今年度も2か月が経ちます。新たな生徒たちを迎えて、緊張していた気持ちも少し慣れてきて、つい気持ちが緩んでしまう時期でもあり、事件が起きないよう気を引き締めなければ、などと自戒しております。
事件と言えば、長く続いているミステリー系のシリーズでよく言われるのが、「主人公が事件に巻き込まれすぎ」問題ですよね。刊行感覚が短い、多作の作家さんだと特にその傾向があって、年に1回どころか月に1回ペースで「偶然」事件に巻き込まれるなんてことが起き、むしろ事件の原因は探偵役の主人公なんじゃないか、なんてからかわれたりしてしまう事態が起きたりします。名探偵〇〇シリーズとかに多いですかね。
という流れでどの本を紹介しようか悩んだのですが、あえてミステリーではないやつにしました。
https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344402706/
『バトル・ロワイヤル』は映画も作られて、人気のある作品ということで間違いないと思うのですが、内容はただただ人が死んでいくというものなので、なんというか言い方が難しいのですが、人の命の重さとか、世界についての思索とか、いわゆる「難しい小説」のテーマになりがちなものがまったくない作品だなと、最初に読んだ時には感じました。
ただ面白くなかったかと言えばそんなことはなくて、読み終わってすぐにもう一回読んだくらいにははまりました。重々しくひとの内面を語ろうとしないことで、逆に命の意外な軽さとか、日常と隣り合わせの狂気とか、そんな感じの雰囲気がだせていたのかな?多分。
ミステリーで人が死ぬのとかもそういう日常から非日常への移行としての演出に部分があったりするんだろうなと思うんです。転生ものみたいにありえない設定で異世界に行ってしまうとか、最初からファンタジー的な世界設定があるのではなくて、あくまで普通の生活をしている中で出会う非常事態としての「異世界」を作る力が、殺人事件にはあるのではないかと。
これはいわゆる「日常の謎」的なミステリーでは出せない雰囲気で、むしろ『バトル・ロワイヤル』みたいなホラー?スプラッタ?みたいなジャンルの方が近いものを感じます。今現在は平和に暮らしているけれど、この後すぐに事件に巻き込まれてしまうかも、というスリルを安全圏から楽しめるのが、こういったジャンルのいいところなのかもしれないですね。しかも、ミステリーであれば最終的に探偵役が事件を解決してくれるはず、という安心感とともに読み進められて、より安心ってわけです。現実ではそんな便利な人はいないので、事件なんかないにこしたことはないんですけども。
というわけで、6月もこれまで以上に気持ちを引き締めて、安全第一でいきたいなあ、と改めて決意しております。探偵はいない方が平和です。きっと。
