どんなエンディングが好きですか?

 「ハピエン厨」という言葉を聞いたことはありますか?「ハピエン厨」はハッピーエンド至上主義者、つまり物語の結末がハッピーエンドじゃないと気が済まないという考え方の人のことです。世界を揺るがすような大きな戦いがあっても、主人公やその仲間たちは誰ひとり犠牲になることなく、平和を勝ち取って笑い合う―そんなエンディングが大好きな人たちです。

 「ハピエン厨」があるように「バドエン厨」という言葉もあるのですが、指すのはバッドエンド至上主義者というほど尖った人たちだけでなく、なんとなく後味悪い終わり方がいいなとか悲恋のラブストーリーが好きといった割と幅広い層を指します。バッドエンドが好きというより単なるハッピーエンドが気に入らないという感じでしょうか。

 私は10代の頃、かなり尖った「バドエン厨」でした。バッドエンド作品の中には結末の残酷さを際立たせるために中盤まではほんわかした幸せな描写や爽快感あふれる展開に満ちた作品も少なくないのですが、そこで油断した「ハピエン厨」が結末に悲鳴をあげたりするのを見て、「世の中そんな甘いわけねーだろw」とほくそ笑むような奴でした。ええ、認めますとも、かなり拗らせてたと。こんなにも「バドエン厨」を気取り、ハッピーエンドをバカにしていたのはひとえ“僻み”のせいです。不幸こそが世界の真実だと思い込んで、幸せな他者を―それがフィクションのものでも、受け入れようとしなかった心の狭さゆえです。

 そんな私ですが、今は「ハピエン厨」に共感することも多いです。物語として納得感があるのは悲しい結末の方が多かったりもするのですが、もっと幸せな結末でもいいんじゃないかという感情も理解できます。そうやって広い心で触れる物語は昔より魅力的に思うようになりました。今はどんなエンディングでも、いい作品にたくさん触れたいと思っています。