随筆文について

ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖(すみか)と、又かくのごとし。

有名な鴨長明の方丈記の出だし部分です。ちなみに現代語訳は以下のようになります。

さらさらと流れゆく川の水は、絶えることがありません。しかもよく見てください。新しい水と、常に入れ替わっています。勢いよく変化しています。

流れが止まっている水面には、ぶくぶくと泡が浮かんできます。しかも大きな泡も、小さな泡も、生まれたかと思うと、すぐに消えていきます。

いつまでもふくらんでいる泡なんて、見たことがありません。

まさに人の一生も、同じではないでしょうか。

川の流れのように幸せも、悲しみも、時とともにすぎていきます。

水面の泡のように、大切な家も、財産も、人の命も、儚く消えていくのです。

(一万年堂出版HPより引用)

なぜ、方丈記なの?それはネタがないか…じゃなくて、4月22日は「方丈記」が完成した日なんだそうです。方丈記は日本三大随筆の1つです。ちなみに三大随筆とは「枕草子」(清少納言)、「徒然草」(吉田兼好)、「方丈記」です。この随筆という分野なんですが、小説や論説文とくらべて解きにくいという話をよく耳にします。随筆を辞書で調べると「見聞したことや心に浮かんだことなどを、気ままに自由な形式で書いた文章」とでてきます。つまり論説文のように理路整然と展開するわけでも、小説のように起承転結がはっきりしているわけでもない。つまり、とらえどころがないので、解きにくく感じるんですね。じゃあどうすればいいのか。「じっくり、よく読みなさい」ではあまりに不親切なので少しだけ書きます。まず、随筆文という分野であることを忘れましょう。別に分野が分かったからと言って、分葉の中身が分かるわけではないのです。論説文等と同じように、筆者の意見と、事実とをしっかり区別しましょう。方丈記で言えば、「いつまでもふくらんでいる泡などない」という事実と、「人の一生と同じでは」という鴨長明の意見の部分とに割れますよね。そこで設問に応じて「筆者の考え」をきかれているのか、「どういう事実」から判断しているのかなどに着目していきましょう。随筆に限らず、入試に使われる文章は必ずしも子供向けに書かれているわけではありません。大人なら、今まで生きてきた経験で想像できることも、小中学生には難しいことは多々あります。そこを補うのは練習量です。先ほど書いた事実と意見のようなヒントを足掛かりにたくさんの練習をしましょう。ちなみに私たちの教室では演習時間をたっぷりとれる時間割を作っているので、興味のある方は是非一度ご来校くださいね。と最後は宣伝で締めてしまいました。では!