ひまわりの日

 1977年7月14日、気象衛星「ひまわり1号」が打ち上げられました。「ひまわり」とは、常に太陽を向いている植物のヒマワリのように、静止気象衛星が地球の方向を向いていることからついた愛称です。つまり本名ではなかったのですが、8号からは正式名称として採用されました。

 台風の接近が報じられ、日本各地でさまざまな対応が準備されていますが、気象衛星は天気予報において不可欠な情報を観測によりもたらしています。しかし、気象衛星が打ち上げられるよりも遥か昔から人々は天気の変化をより正しく予測する試みを続けて来ました

 古代において、天気は多くの人々の生計と生活に大きな影響を与えるものであり、今よりも重要なこととして捉えられていました。バビロニア人は雲のパターンから天気の予測を行い、アリストテレスが気象学の考えに基づいた天候のパターンを描きました。中国大陸の民族は少なくとも紀元前300年までに天気の予測を行っていたようです。古代における天気予報の方法は天候のパターンを見つけることに依存していました。例えば、「夕焼けがきれいに見えたら明日は晴れる」のようなことです。こういった経験則は世代を越えて天気に関する知恵を伝えることができました。しかし後の研究により、厳格な統計学的分析に依拠しないものもあるということが判明してきています。

 現実的な技術問題から中世から近代においても手法においての大きなイノベーションはありませんでした。しかし、産業活動や軍事行動の範囲が拡大したことで「今いる場所の天気の変化」だけでなく「これから行く場所の天気の変化」についてもより詳しく知る必要性はより高まることになりました。この需要に応えるための重要な要素として広範囲から気象状態に関する情報をなるべくリアルタイムで収集することが挙げられますが、それを有意なレベルで可能にしたのが1837年に電報の発明でした。このあたりから天気予報は近代化したといえます。1854年にはイギリス気象庁が設立され、1870年代に天気図の作成を開始、1879年には新聞に対して情報提供を開始するなどの試みを行っています。

 現代の天気予報は数値シミュレーションに基づいた予報が行われています。この考え方は1922年にルイス・フライ・リチャードソンによって提示されましたが、シミュレーションに必要な方程式に観測データを代入して解を求めていくには膨大な計算が必要で6時間予報のために1ヶ月かかるという有り様だったので当時はとてもじつようかできませんでした。しかしコンピュータの登場により実用可能な早さで計算を完了させることができるようになりました。さらにコンピュータは世界中をインターネットでつなぐことにより、計算に必要なデータや算出された気象予測の結果を伝達する速度さえも向上させました。

 ひまわりの花言葉は「あなたを見つめる」です。現在の天気予報は、局所的で集中的な豪雨さえも予測することができ、この情報を得ることで私たちは雨具を準備したり、降雨中の外出を避けることができたりします。これを支えているのが気象衛星「ひまわり」です。いまも「ひまわり」は私たちの生活を宇宙から見つめて支えてくれています。